医療崩壊のすすめ | Hiroyuki Morita | TEDxKagoshima

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Japanese
0:00
翻訳: Riaki Poništ 校正: Reiko Bovee
0:20
皆さん こんにちは
0:22
(観客)こんにちは
0:25
(森田洋之)白衣の男が出てきました
0:30
僕は誰でしょう
0:32
(笑)
0:34
医者です
0:38
医者が出てきたってことで
0:40
新しい治療法だったり 新しい健康法だったり
0:45
そんないい話が 聞けるんじゃないかなと
0:48
お思いかなと思います
0:50
でも今日は 僕はそういう話は
0:53
残念ながらしません
0:55
じゃあ何を話すか
0:57
実は これです
1:00
[医療崩壊のすすめ]
1:06
おかしいですよね
1:07
(笑)
1:09
医者が医療崩壊すすめて どうすんだと
1:11
僕も思います
1:12
僕も本当は 医療崩壊を すすめたいわけでは ありません
1:18
じゃあ 何でこんなことを 僕は言ってるか
1:21
実はですね 僕は医者になる前
1:24
経済学部を卒業してます
1:27
で 一から 医学部に入り直して
1:33
卒業して 医者になりました
1:36
もちろん経済も良かったんですけど
1:37
何か 直接 人の役に立てる仕事って
1:42
何かないかなぁと思って 医者になりました
1:45
で 医師免許取って
1:49
僕は内科医なので
1:51
大きな病院で胃カメラしたり そういうことをしました
1:55
そうすると 他の病院の先生—
1:58
病院の中の他の先生から
2:01
「うちの患者さん ご飯食べられなくなったから
2:06
先生 胃カメラできるから 胃ろうを入れてくれないか」
2:09
そんな話が よく来るようになりました
2:11
胃ろうっていうのは 皆さんご存じかもしれないんですけども
2:15
こうやって お腹に穴をあけて
2:18
直接 胃に栄養を送る
2:20
そういう栄養法です
2:24
僕も最初は全然 うまくできなかったんですけど
2:29
何例も何例もやっていくうちに だんだん上手になってきた
2:33
他の先生からも 「上手くなったね」とか
2:37
「上手になったね」とか言われて
2:39
得意になってた時期がありました
2:42
そんなときに 近くの高齢者施設に行ったら
2:49
すごくショックだったことがありました
2:51
それは 病棟を—
2:55
ほとんどの病棟にいる患者さんが
2:59
ほとんど寝たきりで 胃ろうされていた
3:04
そして その患者さんは ほとんど意識がない
3:08
寝たきりで 意識がなくて
3:12
会話もできない
3:13
「痛い」も「痒い」も言えない
3:15
その状態で何年も 長生きは10年以上です
3:21
その状態を見たときに 僕は本当にショックを受けました
3:26
医者をやめようかなとも思いました
3:28
人の役に立とうと思って 医者になった
3:32
それなのに まったく人の役に 立ってるという実感が湧かなかった
3:38
僕は医者をやめようと思いながら 悩んでいました
3:41
そのとき ちょうどですね
3:44
北海道の夕張市ってとこが
3:47
財政破綻して 医療崩壊して
3:51
そこで 頑張っている 村上先生って人が
3:55
予防医療とか そういうので 頑張ってるということで
3:58
救いを求めて 夕張に行きました
4:02
今日は そんな話をしようかな と思っております
4:06
さあ 夕張市 皆さん ご存知ですか
4:12
北海道の だいたい 真ん中あたりにあります
4:17
札幌がここなので
4:20
北海道の中では かなり近い方なんですけど
4:24
でもこれもですね 60キロあります
4:26
60キロっていうと
4:28
鹿児島で言えば だいたい 錦江湾1つ 丸々入るくらい
4:32
それぐらいの距離ですね
4:34
意外と遠いですね そう見るとね
4:38
で 夕張と言えば 皆さん
4:43
メロンですね そのとおり
4:46
メロン そして さっき言った財政破綻
4:50
この2つで有名ですね
4:52
でも 実は 一番大事なものがあります
4:57
これ日本一なんですけど これ有名じゃない
5:00
でも一番大事だと思います
5:01
何でしょう
5:02
実は 高齢化率
5:04
[45.6%]
5:06
高齢化率が45%です
5:10
日本一です
5:13
今 日本全体が25%なら ほぼ倍ですね
5:19
これだけ高齢者が多い— 日本一高齢者が多いところで
5:24
普通に考えたらですよ
5:26
医療は充実してくれなきゃ いけないって考えますよね
5:31
でも さっき言ったように 医療崩壊してしまった
5:36
「医療崩壊」 一言で言いますけど
5:39
具体的にはこういうことです
5:41
[夕張市の病床数]
5:43
それまでは 夕張市内に 総合病院が1つあって
5:46
171床
5:48
それが医療崩壊 財政破綻によって
5:52
市がお金を「もう出せないよ 市立病院は継続できません」ていうことで
5:56
小さな診療所19床になりました
5:59
病床は ほぼ10分の1ですね
6:03
もちろん 医者も去りました
6:07
医療機器もですね 何と今は
6:10
夕張市内に CT、MRI1台もない
6:14
0台です
6:16
市内にですよ 病院にじゃなくて
6:21
しかも 救急病院もなくなった
6:24
救急病院がなくなるということは こういうことです
6:27
救急車が病院まで到着する時間
6:30
それまで30分台だったんだけど
6:32
なんと ほぼ2倍 60分台になりました
6:37
もちろん ちょっとした風邪とか 発熱ぐらいだったら
6:42
市内の診療所で僕らが診ます
6:45
ただ 例えば心筋梗塞
6:48
例えば交通事故で大怪我したとかね そうなったとき
6:54
札幌の病院まで ドクターヘリで行ってもらいます
6:58
となると 必然的に 時間は伸びますよね
7:02
じゃあ この状況で
7:04
夕張市民 生活できると思いますか?
7:09
不安でしょうがないですよね
7:11
でも僕が行ってみたら 夕張市民は すごく元気でした
7:17
どういうことか
7:18
例えば この人
7:23
(笑)
7:24
お若く見えますけど
7:26
実はですね 60代です
7:29
60代の女性
7:32
もうすぐ お孫さんが中学生です
7:36
すごいですよね
7:37
この人は 診療所の近くで 床屋さんをやってて
7:41
町の中心人物ですね
7:44
夜な夜な この人の家で 飲み会が開催されるという
7:48
もちろん僕も参加する
7:51
そこで どんな話がされるかというと
7:55
「今日は何歩 歩いた 何万歩 歩いた」
7:58
「今日は雪かきを何時間した」
8:03
「血圧は こんだけ今 下がってるぞ」とかですね
8:06
「私はガンを早期発見して治療した」 とかですね
8:11
そういう いい話ばっかり聞くんですね
8:16
で この人は何をやってるかというと
8:17
先ほどから ちょっと 不思議に思ってると思いますけど
8:22
「私は病院は絶対行かない」
8:25
「医者は嫌いだ」って 言うんですね この人
8:28
「もちろん 大きな病気とか 大きな怪我とかしたときは
8:35
お医者さんのとこ行くけども
8:37
それまでは 私はできるだけ 自分の免疫力を頼りに
8:45
免疫力を上げる
8:47
そのためにストレッチをやるんだ」 って言って
8:49
座布団を こうやって押しのけて
8:53
ストレッチをしてくれてる姿が これですね
8:55
そこを僕が激写したと
8:57
(笑)
9:01
でも CTもMRIも医療機器も
9:05
すべての医療機器 道具です
9:08
健康で長生きするための 道具ですよね
9:11
もし それがなくても 健康が保たれるのであれば
9:15
それは非常に素晴らしいことです
9:18
近くに病院が 総合病院がある ということよりも
9:22
市民が意識を変えるっていうことは
9:25
病院があること以上に 価値があることだと僕は思います
9:32
50代 60代 元気な人 まあいいでしょう
9:35
じゃあ 80代 90代の じいちゃん ばあちゃん
9:40
さすがに病院がなかったら
9:42
不安でしょうがないんじゃないかと 思いませんか
9:45
思いますよね
9:48
この方 90代の女性 ばあちゃんですね
9:52
この方 まだ お元気な頃の写真
9:57
この人 診療所で 肺に影が見つかって
10:01
札幌の病院で検査しました
10:03
そしたら CTとか色々検査したら
10:05
肺がんが見つかったんですね
10:08
肺がんが見つかったら 普通は
10:11
抗がん剤をやるとか
10:13
入院して治療しましょうって 話になります
10:16
もちろん そういう話を されたそうですが
10:20
このばあちゃん 何と
10:22
その一回札幌に行って 検査したきり
10:26
二度と行かなかった
10:28
夕張に帰って 最後まで生活しました
10:31
その亡くなる直前の写真がこれ
10:36
すごく いい笑顔ですよね
10:39
亡くなる前の日の晩まで まんじゅう食べてたそうです
10:44
好きなものを食べて
10:47
ご家族に囲まれて 地域の人々に囲まれながら
10:50
最後まで生活することを この人は選んだということですね
10:57
こんなことをしてたら
10:59
こういう高齢者が いっぱい いるわけです
11:03
よくよく考えたら
11:04
僕が総合病院時代に感じていたこと
11:10
胃ろうの方が いっぱい いるような世界
11:13
夕張では そういう高齢者は—
11:16
生き生きとしていない高齢者は 一人もいませんでした
11:22
ただ これは僕の印象です
11:26
何か すごい世界が 広がってるなぁと思ってましたけど
11:32
実は 印象だけじゃなくて 数字にも出ました
11:35
例えばこれです
11:37
救急車の出動回数
11:40
下がっちゃったんですね
11:41
ちなみに全国的には この10年でほぼ1.5倍
11:45
高齢化率が 高まれば高まるほど
11:48
救急車の出動回数が どんどん増える
11:51
普通に考えたら そうだと思います
11:52
でも高齢化率 日本一の夕張市
11:56
高齢化率 下がってんじゃないですよ
11:58
まだまだ上がってんですよ
11:59
2年 3年前は43%でした
12:01
今45% まだまだ 上がってる
12:03
でも なんと こうなっちゃいました
12:06
[救急車出動回数]
12:08
ほぼ半分ですね
12:10
救急車が呼ばれなくなった
12:13
どういうことか
12:14
さっきのばあちゃん 救急車呼ばないんです
12:18
何でか
12:19
だって もう命を
12:22
命の終わりを受け入れてるんですね
12:25
救急車ってのは
12:27
この命を助けてくれという叫びのもとに 呼ばれるものですよね
12:33
あのばあちゃんは 助けてくれと思ってないんです
12:35
最後まで自分の家で 生活したいと思ったんです
12:38
だから呼ぶのは 訪問看護師 在宅医
12:41
もちろん 発熱とか 一時的なことで
12:45
まぁ これは 良くなるよってことであれば
12:48
家で点滴したり 座薬使ったり 治療します
12:52
でも そうでないときは 残念ながら お看取りすると
12:57
そういう世界です
12:59
だから救急車が減る
13:00
しかも 医療費も 減っちゃったんですね
13:03
高齢者1人あたり医療費
13:05
全国的には ものすごい勢いで増えてます
13:08
[高齢者一人あたり医療費]
13:10
さぁ 夕張市は
13:11
なんと一時より だいぶ下がった
13:15
[83万円→73万円]
13:17
すごいですよね
13:19
たぶん 救急車が減るとか
13:22
高齢者の医療費が減るとか
13:24
そういう地域って 全国でも ほとんどないと思います
13:27
でも夕張市はできた
13:29
しかもですね
13:30
なんと 死亡率まで 下がっちゃったんですね
13:35
これがすごいです
13:35
[疾患率死亡率 医療崩壊!]
13:37
日本人の死因の1位がガン 2位が肺炎
13:41
違うこれ 2位が心臓ですね で 3位が肺炎
13:44
ワン・ツー・スリー 全部下がっちゃった
13:47
すごいですよね
13:49
何がポイントか
13:51
たぶん 僕が思うに
13:53
予防の意識ですね 市民が予防の方に意識を変える
13:57
[予防]
13:58
「病院があるから安心」 ではなくて
13:59
「しっかり自分で できることはやるんだ」と
14:02
予防の意識
14:04
日本人の病気の大部分は 生活習慣病から起きてるといいます
14:10
だったら 生活習慣を 変えればいいじゃないですか
14:13
みんな分かってるけど できない
14:17
あと もう1つ 終末期医療
14:20
[終末期]
14:21
残念ながら 日本人の死亡率は100%
14:27
日本人だけじゃないですけどね
14:31
いずれ 医療が解決できない問題が やってきます
14:35
その時に しっかりと終末期の イメージを持ってるか持ってないか
14:39
家族と話し合ってるか 話し合ってないか
14:42
地域の人たちと そういう話をしてるか
14:44
もう もちろんですね
14:45
文章にまとめてればいいんですよ リビングウィルとか
14:48
そこまでなくても
14:49
地域で話をしている 家族で話をしている
14:51
その事実があるだけでも 結果は全然違うと思います
14:57
さらに 地域社会ですね
15:00
若いときは予防の意識を高める
15:03
地域のみんなで予防の意識を高める
15:05
そして 歳を取ってきたら
15:08
みんなで 地域みんなで その命を受け止める
15:11
そういう暖かい地域社会を作る
15:14
これがポイントだと思います
15:16
じゃあ これ 「夕張市民だから できたんでしょ」
15:21
よく言われるんです
15:23
「夕張は財政破綻したから
15:26
夕張市民だから できたんでしょ」って
15:28
鼻で笑われることがあります
15:30
「一緒にするな」と
15:32
でも 確かにですよ
15:35
夕張市民は危機感があったから できたかもしれない
15:39
じゃあ 僕らは 日本人 危機感を持たなくていいのか
15:44
僕は 危機感を持ったほうが いいと思います
15:47
なぜならば 今 国全体の借金は
15:50
1200兆円って言われてますね
15:53
中央政府と地方自治体の 借金合わせたら1200兆円
15:57
これを1人あたりにすると
16:00
1人1千万
16:03
皆さん1千万万 負債を抱えています
16:05
ただ 今 生まれたばかりの赤ん坊と
16:09
90代のじいちゃん ばあちゃんを比べたら
16:11
やっぱり そこは
16:14
赤ん坊は これから長く 返していかなきゃいけない
16:17
差はありますよね
16:18
となると 今 生まれてきた赤ん坊は
16:21
生まれた瞬間に 何と
16:23
8300万円の借金を背負った状態で
16:28
生まれてくるという 計算をする先生もいます
16:33
しかも これは現時点の数字です
16:36
これから高齢化率は どんどん増える
16:39
今 日本が ここです 25%
16:43
数十年後には40%になります
16:45
じゃあ 高齢化率が2倍になったら
16:48
借金も2倍になるんですか
16:51
医療費は どんどん上がってますもんね
16:54
ちなみに夕張は今ここです
16:55
[夕張は今ここ 日本は今ここ]
16:56
かなり先取りしてますね
16:59
でも 日本中がいずれ 夕張みたいに
17:02
高齢化率が高くなる
17:04
じいちゃん ばあちゃんばっかりになる
17:06
そんな世界になります
17:09
しかも これから人口は どんどん減るらしいです
17:14
今までの百年は 異常な百年でした
17:17
それまで ずっと 1千万 2千万 3千万で
17:19
ほぼ横ばいだったのに この百年で
17:22
なんと1億2千万になった
17:24
これから こうなるらしいです
17:28
良くて半分 悪いと 3分の1 4分の1
17:33
今までの意識で 今後の百年を 乗り切れるという保証はないですね
17:38
意識を変えなきゃいけない
17:41
病院が欲しい 何々が欲しい
17:43
「あれも欲しい これも欲しい」 っていう時代から
17:46
「病院がなくても やっていけるよ」 っていうような時代に
17:50
なっていくべきじゃないかなと思います
17:53
じゃあ 日本 もう未来はないのか
17:57
そんなことはないと思います
17:58
これ見てください
18:00
日本は高齢化率 ずっと世界一なんです
18:02
これからも
18:05
日本だけじゃないですよ 世界中が高齢化率がどんどん上がっていく
18:11
さらに これ『エコノミスト』っていう 雑誌の表紙ですけど
18:14
[日本の抱える重荷]
18:15
日の丸に押しつぶされてます こんなショッキングなことを
18:19
特集されるのも 日本が注目されているからです
18:23
世界中が解決できない高齢化問題
18:26
日本は その世界一なんです
18:27
日本に世界中が注目してます
18:30
だから こんなこと言われるんですね
18:33
じゃあ どうするか
18:35
これが医療費ですけど 世界中 医療費が どんどん上がってます
18:39
アメリカ フランス カナダ イギリス
18:42
これからも高齢化率は どんどん高くなる
18:44
たぶん こうなるでしょう
18:48
じゃあ どうするか
18:49
夕張はこうなったんです 下げられた
18:52
じゃあ日本も夕張の真似すれば いいんじゃないですか
18:56
そしたら こうなる
18:58
もしこうなったら 世界中が びっくりしますよね
19:00
世界中から尊敬される 高齢化社会対策をできる—
19:05
日本になれると思います
19:07
これ 僕は「夕張モデル」って 言ってますけど
19:10
これからは「日本モデル」に しないといけないなと思ってます
19:13
[夕張モデル→日本モデル]
19:14
そんな思いで 僕は九州に帰ってきました
19:18
2007年 夕張市が 財政破綻したとき
19:21
「夕張市民どうなっちゃうんだろう」
19:23
「かわいそうだな」と 思いませんでしたか
19:26
僕は九州で思ってました
19:29
でも もしかしたら 今 かわいそうなのは僕らかもしれない
19:33
夕張市民は分かった
19:35
でも僕らは もしかしたら 気づいてない
19:38
もしかしたら 気づいていない ふりをしているだけかもしれない
19:44
日本が世界のリーダーになれる
19:48
鹿児島は明治時代に 日本を変えた実績を持っています
19:55
鹿児島が変われば日本が変わる
19:58
日本が変われば世界が変わると 僕は勝手に思っています
20:02
何か こう考えると ワクワクしますよね
20:06
軍事力でもなく 政治力でもなく 経済力でもなく
20:10
高齢化対策で 日本は世界のリーダーになる
20:15
そんなことを僕は考えてます
20:17
一緒に ワクワクしながら 世界を変えてみませんか
20:22
ご静聴ありがとうございました
20:23
(拍手)
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